2019年にプロデューサーの安藤匠郎と演出家の山田英真により結成されたアメツチ。これまで山田の脚本・演出で、プロジェクションマッピングやホログラム映像など技術を駆使した演出と、登場人物が舞台上で生きているライブ感を重視したエンターテイメント作品を上演してきたが、このたびRe:flag公演として『sacrifice』を上演する。
アイドルのファン達が集う現代のファミレスと、とある神の教えをめぐって争いがはじまろうとしている中世ヨーロッパを思わせる町という2つの時代を舞台に、出演者は全員が両方の時代に出演し2役を演じる。実験的な公演となりそうな今作について、プロデューサーの安藤匠郎、ツルタとクレド役の湯本健一、中館とレガト役の氏家蓮に話を聞いた。
アイドルのファン達が集う現代のファミレスと、とある神の教えをめぐって争いがはじまろうとしている中世ヨーロッパを思わせる町という2つの時代を舞台に、出演者は全員が両方の時代に出演し2役を演じる。実験的な公演となりそうな今作について、プロデューサーの安藤匠郎、ツルタとクレド役の湯本健一、中館とレガト役の氏家蓮に話を聞いた。
■ これまで以上に役者の演技をじっくり見せる作品
「まずは安藤さんにお伺いします。アメツチプロジェクトとして今回は「Re:flag」と銘打っての公演ですが、どのような企画意図があるのでしょうか。
- 安藤
- アメツチはこれまで2.5次元的な舞台作品を作ってきたのですが、そういう作品しかやらない団体だと思われてしまうのもどうなんだろうと考えて、ちょっと違うこともやっていこう、ということで、山田英真の完全オリジナルでやりたいことやる企画として「Re:flag」をスタートさせました。
アメツチは映像技術を使った演出が特色だとうかがいました。今回の演出もそういった方向になるのでしょうか。
- 安藤
- いえ、今回は基本的にほぼ会話劇なので、そうした技術を使うよりも、より役者の演技をじっくり見せる“生”の感じにこだわりたいと思っています。劇場のサイズ的にも、セリフの感じ的にも、変に映像を使ってしまうと役者が映像に芝居を合わせていく感じになってしまう気もしたので、映像はサポートとして使うくらいの感じで、今回は役者の能力に頼り切って作ろうかなと。
- 湯本
- めっちゃプレッシャー(笑)。
- 安藤
- だから今回のキャストは、山田が一緒にやったことあるか、演技を見たことがある人しか基本的には声をかけていないんです。
湯本さんと氏家さんは、5月28日までT-gene stage『MOMOTARO』という作品で共演されていて、引き続きの共演ということになりますね。
- 湯本
- 蓮さんとは、今年1月に『嘘つき』という公演で初共演だったので、これが3回目の共演になります。
- 氏家
- 短い期間で共演が続いたから、一気に距離が縮まったよね。3回目の共演だけど、作品ごとにそれぞれ作風は違うじゃないですか。湯本くんのお芝居の良さは共演した中でいろいろ見てきましたが、今回はまた違った世界観で、また新しい湯本くんを見られるのが楽しみです。
- 湯本
- 僕は蓮さんがお芝居をしているときのエネルギーがすごく好きで、今回も脚本を読みながら、蓮さんがこの役をやったらどうなるんだろう、と想像するだけでワクワクしました。
■ 出演者全員が一人二役 どう切り替えるのか?
湯本さんは現代パートではツルタ、中世パートではクルドという役です。ご自分の2つの役についてご紹介いただけますか。
- 湯本
- ツルタはアイドルのオタクで、クレドは大学で神学の研究をしているんですけど、どちらの役も自分の考えをしっかりと持っていて、周りの人たちと会話をしていく中で、自分の意見と相反した人が来たときにどう行動するか……というような役です。
- 氏家
- めちゃめちゃいい役だから、湯本くんの良さがそのまま役にも乗っかってにじみ出ると思います。
- 湯本
- そうなれるように、頑張ります!
氏家さんは現代パートでは中館、中世パートではレガトという役です。
- 氏家
- 中館はファミレスの店員で、そのファミレスにアイドルオタクのツルタ達が来るんです。彼らのことを「へぇ、そうなんだ」って見ているポジションなので、観客の目線に近いかな、と思っています。レガトに関しては、ちょっと謎なキャラなので、どんな役なんだろう、というワクワクする気持ちも含めてお客さまにお届けできたらいいなと思います。
2つの時代を2つの役で演じ分けるということで、衣装をどうするのか、場面転換はどうなのか、いろいろ気になりました。
- 氏家
- 脚本を読むと、舞台袖にはけないで役を切り替えるという箇所がいくつもあるんですよ。
- 安藤
- どうするんだろう? って僕も思ってます(笑)。舞台上のことは基本的に山田に全部任せているので。
- 湯本
- 音と照明の変化も含めて、例えばわかりやすくパッと切り替わったりとか、やり方はいろいろあるのかな、とは思っていて、いずれにせよ面白くなりそうだな、と感じています。
■ 観客にいろいろ持って帰ってほしい
タイトルが『sacrifice』ということで、直訳すると「犠牲」というちょっとドキッとするワードです。
- 安藤
- 今回、日本語のわかりやすいタイトルにできる? と山田に聞いたんですけど、「いや、『sacrifice』で」と言われてこれに決まったので、そこはこだわりなんだろうと思います。山田は、割とこちらの要望を聞いてくれる方なんですけど、何個かは絶対譲らないところがあって、多分そこは自分の中でかなり確信を持って大事にしてるとこなんでしょうね。でも取材とかでは、どうして『sacrifice』というタイトルなのか、というような具体的な話は言わないんだよね。
- 氏家
- それは、あえて言わないんですか?
- 安藤
- そうだと思うよ。今回も観客にいろいろ持って帰ってほしい、って言ってたから、公演前にあんまり自分から答えを言いたくないタイプなんだと思います。
今作の「特にここを見て欲しい!」と思うポイントを教えてください。
- 湯本
- 僕自身が今思っていることと重なるセリフとかシーンがいろいろあるんですよ。だから、お客さんに聞いてもらいたいと思うセリフもいっぱいあるし、そのセリフを聞いてもらったときにきっと何か感じてもらえるんじゃないかなと思います。
- 氏家
- 登場するキャラクターが全員魅力的だし、セリフには現実世界に通ずるメッセージが結構散りばめられているので、お客様が思うままに感じてくれたら、何か受け取れるものはあるんじゃないかな、と思っています。
- 安藤
- 僕らは結構今までは、どちらかというとわかりやすい展開で、派手なエンタメ作品が好きでやってきたところはあるんですけど、今回はあえてじっくりとセリフで見せる部分が多い作品をお届けしようと思っています。セリフをどう拾うのかによって感じ方も全然違ってくると思うので、そこを楽しんで欲しいですね。あとは、普段推されてる側の人たちが、舞台上では推す側の人になっている、というところも面白いんじゃないかなと思っています。
- 氏家
- 確かにセリフの中には「これ、僕らが言うの?」って思うようなのがありますよね(笑)。
- 安藤
- 僕はそこが本当に楽しみです(笑)。「お前らが言うか!」っていう感じで。
- 湯本
- お客さんがどういうリアクションになるのか、ちょっと想像つかないです……(笑)。
- 安藤
- どういう受け入れられ方になるのか未知数なので、そういう意味では挑戦的かもしれないですね(笑)。そこも含めて、お客さんはに楽しんでもらえたらと思います。
ライター : 久田絢子
撮影 : 池上夢貢
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