――シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』が、昭和の大阪を舞台に、全編大阪弁で上演されます。そのアイデアの原点とは？
末満 以前『ハムレット』を下敷きにした『羽生蓮太郎』(17年)という作品を大阪の劇団Patchの公演でやった時、アプローチに対する手応えを感じていたんです。
シェイクスピア劇のまくし立てるような台詞の言い回しと、テンポの速い大阪弁との相性が良かったんです。機会があればまた、今度は『ロミオとジュリエット』でやってみたいと思っていました。
――脚本を読まれた印象は？
桜井 まずは「楽しい！」と思いました。これまでも『ロミジュリ』に触れる機会はありましたが、今回の末満さんの脚本はすごくわかりやすいですし、スッと入ってくる。さらに構成の仕方によって、またグッと面白くなるんだなと。とても惹かれて、あっという間に読んでしまいました。
近藤 僕はひとつの新作として、この『富美男と夕莉子』という作品が面白いと思いました。大阪弁のリズム感やテンポの良さが、作品に非常にマッチしているなと。あと先ほど末満さんがおっしゃった『羽生蓮太郎』は、僕ら劇団Patchにとってすごく大切な作品のひとつなのですが、当時僕は日替わりで1日のみの参加だったので、そのリベンジ的なものを今回が果たせる機会をいただけてとても嬉しいです。
――ふたりの死から出会いの瞬間へと、時間軸が遡っていく構成がユニークですね。
末満 『ロミジュリ』の翻案ものとして、なにか更新出来るようなものに挑戦してみたい、という思いが強くありました。ただ構成がトリッキーな分、狂言回し役が必要だなと。そこで近藤くん演じる弁太郎に、その役割を担ってもらおうと。今稽古していて、狂言回しとしてうまく機能しているのではないかと感じています。
近藤 すべてを目撃する人物として、舞台上にずっといますからね。それぞれの状況を説明することも必要ですし、そのシーンの空気を最初に作るのが弁太郎だったりもする。その役割をしっかり果たしたいなと思います。
末満 昨日は桜井さんの見せ場のシーンをやったんですが、おじさんメンバーで、「あそこ泣けるよね」って話していたんですよ(笑)。
近藤 それ、僕も思いました！
桜井 嬉しいです！ 笑いから泣きに至るシーンで、パッと空気が切り替わるわけでもない。そのギリギリのラインを探るのがとても難しいなと思います。
末満 最原作の『ロミジュリ』も、見方を変えたらギャグだと思うんですよ。４００年以上前の戯曲は今読むとツッコミどころが満載ですから。でもそれを大阪弁にすることで、素直にツッコめたり違和感を補正することが出来る。そういう強みもこの作品にはあるのではないかと思います。
――稽古開始からまだ3日目とのことですが、順調に進んでいるようですね。
末満 もう全体の4分の1を通しましたからね。普段、僕はとても段取りの多い作品に関わることが多いんですが、今回は本当にお芝居のことだけに集中出来る。刀や特殊能力のない世界が新鮮です(笑)。
近藤 すごく濃い時間を過ごせているなと思います。初日から肩慣らしではなく、剛速球のキャッチボールが繰り広げられているような感じで(笑)。
桜井 はい、圧倒されています。私はまだ数えるくらいしか舞台経験がないのですが、いきなりこんなにエネルギッシュな現場に放り込まれるとは(苦笑)。でも私自身変わりつつあるというか、今回の稽古を通して、自分でも知らない自分が出てくるような気がしています。
――弁太郎の親友であり、夕莉子の運命の人である富美男役の浜中文一さんの印象はいかがですか？
末満 以前舞台で観た浜中くんがすごく面白くて、その面白い浜中くんを思い描きながら脚本を書き進めました。実際稽古に入ってみても、もちろんシリアスも出来れば、おふざけの領域にもパッと入って来られる。シェイクスピアとコテコテ関西の境界線上にずっとある作品で、浜中くんはそこをフットワーク軽く行き来してくれるので、これからますます楽しみです。
――この作品を通し、お客さまにはどんな時間をお届け出来たらと思いますか？
近藤 悲劇でありながらも、明日が見えるような作品になっていると思います。ぜひたくさんのお客さまに届いて欲しいですね。
桜井 どこか難しそうに思われるかもしれませんが、末満さんいわく“アホ”で進んでいく作品です(笑)。そこは演じる側も大事にしていることなので、気負わずに楽しんでいただけたらと思います。
末満 昭和の大阪を舞台にする上で、原作の宗教観を排除したのですが、そうするとどうしても物語の推進力が失われてしまう。で、別の推進力はなにかと考えた時に、それは“アホ”だなと(笑)。アホのふたりが恋を駆け抜けていく物語であり、構成を変えることで、すごく前向きな作品になったと思います。お客さんもぜひ“アホ”になっていただいてから、劇場まで足を運んでいただければと思います。
取材・文：野上瑠美子
末満 以前『ハムレット』を下敷きにした『羽生蓮太郎』(17年)という作品を大阪の劇団Patchの公演でやった時、アプローチに対する手応えを感じていたんです。
シェイクスピア劇のまくし立てるような台詞の言い回しと、テンポの速い大阪弁との相性が良かったんです。機会があればまた、今度は『ロミオとジュリエット』でやってみたいと思っていました。
――脚本を読まれた印象は？
桜井 まずは「楽しい！」と思いました。これまでも『ロミジュリ』に触れる機会はありましたが、今回の末満さんの脚本はすごくわかりやすいですし、スッと入ってくる。さらに構成の仕方によって、またグッと面白くなるんだなと。とても惹かれて、あっという間に読んでしまいました。
近藤 僕はひとつの新作として、この『富美男と夕莉子』という作品が面白いと思いました。大阪弁のリズム感やテンポの良さが、作品に非常にマッチしているなと。あと先ほど末満さんがおっしゃった『羽生蓮太郎』は、僕ら劇団Patchにとってすごく大切な作品のひとつなのですが、当時僕は日替わりで1日のみの参加だったので、そのリベンジ的なものを今回が果たせる機会をいただけてとても嬉しいです。
――ふたりの死から出会いの瞬間へと、時間軸が遡っていく構成がユニークですね。
末満 『ロミジュリ』の翻案ものとして、なにか更新出来るようなものに挑戦してみたい、という思いが強くありました。ただ構成がトリッキーな分、狂言回し役が必要だなと。そこで近藤くん演じる弁太郎に、その役割を担ってもらおうと。今稽古していて、狂言回しとしてうまく機能しているのではないかと感じています。
近藤 すべてを目撃する人物として、舞台上にずっといますからね。それぞれの状況を説明することも必要ですし、そのシーンの空気を最初に作るのが弁太郎だったりもする。その役割をしっかり果たしたいなと思います。
末満 昨日は桜井さんの見せ場のシーンをやったんですが、おじさんメンバーで、「あそこ泣けるよね」って話していたんですよ(笑)。
近藤 それ、僕も思いました！
桜井 嬉しいです！ 笑いから泣きに至るシーンで、パッと空気が切り替わるわけでもない。そのギリギリのラインを探るのがとても難しいなと思います。
末満 最原作の『ロミジュリ』も、見方を変えたらギャグだと思うんですよ。４００年以上前の戯曲は今読むとツッコミどころが満載ですから。でもそれを大阪弁にすることで、素直にツッコめたり違和感を補正することが出来る。そういう強みもこの作品にはあるのではないかと思います。
――稽古開始からまだ3日目とのことですが、順調に進んでいるようですね。
末満 もう全体の4分の1を通しましたからね。普段、僕はとても段取りの多い作品に関わることが多いんですが、今回は本当にお芝居のことだけに集中出来る。刀や特殊能力のない世界が新鮮です(笑)。
近藤 すごく濃い時間を過ごせているなと思います。初日から肩慣らしではなく、剛速球のキャッチボールが繰り広げられているような感じで(笑)。
桜井 はい、圧倒されています。私はまだ数えるくらいしか舞台経験がないのですが、いきなりこんなにエネルギッシュな現場に放り込まれるとは(苦笑)。でも私自身変わりつつあるというか、今回の稽古を通して、自分でも知らない自分が出てくるような気がしています。
――弁太郎の親友であり、夕莉子の運命の人である富美男役の浜中文一さんの印象はいかがですか？
末満 以前舞台で観た浜中くんがすごく面白くて、その面白い浜中くんを思い描きながら脚本を書き進めました。実際稽古に入ってみても、もちろんシリアスも出来れば、おふざけの領域にもパッと入って来られる。シェイクスピアとコテコテ関西の境界線上にずっとある作品で、浜中くんはそこをフットワーク軽く行き来してくれるので、これからますます楽しみです。
――この作品を通し、お客さまにはどんな時間をお届け出来たらと思いますか？
近藤 悲劇でありながらも、明日が見えるような作品になっていると思います。ぜひたくさんのお客さまに届いて欲しいですね。
桜井 どこか難しそうに思われるかもしれませんが、末満さんいわく“アホ”で進んでいく作品です(笑)。そこは演じる側も大事にしていることなので、気負わずに楽しんでいただけたらと思います。
末満 昭和の大阪を舞台にする上で、原作の宗教観を排除したのですが、そうするとどうしても物語の推進力が失われてしまう。で、別の推進力はなにかと考えた時に、それは“アホ”だなと(笑)。アホのふたりが恋を駆け抜けていく物語であり、構成を変えることで、すごく前向きな作品になったと思います。お客さんもぜひ“アホ”になっていただいてから、劇場まで足を運んでいただければと思います。
取材・文：野上瑠美子